口無し/朽ちる

夕方に、蒸れた空気をにゅるんにゅるんとかき分けるように自転車で走っていると、クチナシの濃密な匂いが混じっていた。クチナシは、お花の真ん中が開かないから“口無し”と言うねんよ、と母は教えてくれたけど、音の印象だけで言えば「朽ちること無し」という言葉のほうを考えてしまう。

口と朽ちる、二つの言葉の関係性について。すべての感覚も、思いも、言葉にした瞬間に朽ちていくけれど、その墓場になっているのは「口」なんじゃないか。でも、生きている限り、花が毎年咲きつづけるのと同じで、人もまた言葉を発せずにはいられないのだけれど。

08:15 pm, by bouzu-show  Comments
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